将棋や囲碁の世界で人間を凌駕するAIが登場した背景には、「強化学習」という技術があります。これは、AIが自ら環境と相互作用し、試行錯誤を繰り返しながら最適な行動を学習していくというアプローチです。まるで子供が遊びを通して成長するように、AIも失敗から学び、賢くなっていきます。
強化学習は、機械学習の一種で、教師あり学習や教師なし学習とは異なるユニークな学習メカニズムを持っています。教師あり学習が「正しい答え」を与えられて学習するのに対し、強化学習では明確な正解が与えられるわけではありません。代わりに、AIは「エージェント」として特定の「環境」の中で行動し、その行動の結果として得られる「報酬」(または罰)に基づいて学習を進めます。
この学習プロセスは、以下のような要素で構成されます。
強化学習のエージェントは、まずランダムな行動から始め、その結果得られる報酬に基づいて、どの行動がより高い報酬に繋がるのかを学習していきます。例えば、ゲームであれば、高得点が得られる行動をより多く選択するように方策を修正し、低得点に繋がる行動は避けるように学習します。この試行錯誤のプロセスを膨大な回数繰り返すことで、エージェントは最終的に最適な方策(戦略)を獲得し、どんな状況でも最高の報酬を得られるように賢くなっていくのです。
強化学習の最も有名な成功事例の一つが、Google DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo」です。AlphaGoは、人間の棋譜を学習するだけでなく、自己対戦を繰り返すことで、人間には思いつかないような戦略を発見し、囲碁の世界チャンピオンを打ち破りました。この自己対戦がまさに強化学習の典型であり、エージェントが自分自身を相手に何百万回、何千万回と対戦を繰り返すことで、人間の知識を超えた戦略を獲得していったのです。
強化学習は、ゲームの世界だけでなく、様々な分野で応用されています。
強化学習の魅力は、人間が明示的にルールを教えなくても、AIが自ら最適な行動を発見できる点にあります。これは、ルールが複雑すぎて人間が設計できないような問題や、環境が常に変化するような状況において特に有効です。
しかし、強化学習にも課題はあります。膨大な試行錯誤を要するため、学習に非常に長い時間と計算資源が必要となること、また、現実世界で試行錯誤を行うにはリスクが伴うため、シミュレーション環境での学習が重要になることなどです。
「試行錯誤」という人間や動物の学習プロセスに非常に近いアプローチを取る強化学習は、AIが自律的に賢くなるための強力な手段であり、今後ますます多くの分野での応用が期待されています。
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