人間が日常的に使用する言葉をコンピュータに理解させ、生成させる技術、それが自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)です。AIの歴史を通じて、NLPは常に中心的な研究分野であり、その進化は機械翻訳や対話型AIといった私たちの生活に身近な技術に直結しています。
初期のNLPは、ルールベースのアプローチが主流でした。これは、文法規則や辞書を事前に定義し、それに基づいてテキストを解析・生成する手法です。しかし、言語の曖昧さや例外が多く、手作業でのルール作成には限界がありました。有名な「ELIZA」も、ある種のルールベースのパターンマッチングに過ぎませんでした。
1980年代後半から1990年代にかけては、統計的手法が台頭します。これは、大量のテキストデータ(コーパス)から単語の出現頻度や共起関係といった統計的なパターンを学習するアプローチです。例えば、機械翻訳では、ある単語やフレーズが別の言語でどのように翻訳されるかを確率的に推定する「統計的機械翻訳(SMT)」が主流となりました。Google翻訳の初期バージョンもSMTが基盤でした。これにより、ルールベースでは不可能だった大規模な翻訳が可能になりましたが、依然として不自然な翻訳や文脈の誤解が課題として残りました。
転換点となったのは、2010年代に入ってからのディープラーニングの導入です。特に、以下の技術がNLPの飛躍的な進歩をもたらしました。
Transformerの登場以降、BERT、GPT(Generative Pre-trained Transformer)シリーズ、T5など、事前学習(Pre-training)とファインチューニング(Fine-tuning)を行う大規模言語モデルが次々と開発されました。これらのモデルは、インターネット上の膨大なテキストデータで事前に学習することで、驚くほど高い言語理解能力と生成能力を獲得し、様々なNLPタスク(質問応答、要約、文章生成、感情分析など)で人間を超える性能を発揮するようになりました。
現在、ChatGPTに代表される対話型AIは、この大規模言語モデルの進化の最たる例です。人間と自然な会話を交わし、質問に答え、文章を作成する能力は、NLPが長年追い求めてきた目標の一つが現実のものとなったことを示しています。NLPの進化は、私たちがコンピュータとコミュニケーションする方法を根本から変え、新たな情報利用の時代を切り開いています。
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