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【AIの歴史12】画像認識の夜明け:ILSVRCと畳み込みニューラルネットワーク

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AIが最も劇的な進歩を遂げた分野の一つが、画像認識です。かつては人間には簡単でもコンピュータには極めて難しかった「画像に何が写っているか」を識別する能力が、2010年代に入り飛躍的に向上しました。その大きな転換点となったのが、大規模な画像認識コンペティションILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)と、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network, CNN)の台頭でした。

ILSVRCは、スタンフォード大学の研究者である李飛飛らが構築した大規模な画像データベースImageNetを基盤として、2010年から毎年開催された画像認識の国際的なコンペティションです。ImageNetには、数百万枚もの画像が数千のカテゴリに分類されており、参加者はこれらの画像を正確に識別するモデルを開発するよう競い合いました。

このコンペティションは、それまでの画像認識研究の課題を浮き彫りにしました。従来の画像認識手法は、手作業で特徴量を設計する必要があり、その性能には限界がありました。しかし、2012年のILSVRCで、ジェフリー・ヒントン率いるトロント大学のチームが開発した「AlexNet」が、それまでのエラー率を大幅に改善し、圧倒的な優勝を飾ります。

AlexNetは、ディープラーニングモデルの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を採用していました。CNNは、人間の視覚野の構造をヒントに考案されたもので、画像から自動的に階層的な特徴を学習する能力を持っています。例えば、初期の層ではエッジや色のような基本的な特徴を検出し、深い層になるにつれて、目、鼻、口といったパーツ、さらには顔全体といった複雑な特徴を学習します。

AlexNetの成功は、以下の要素が組み合わさった結果でした。

  • 大規模データセット: ImageNetのような膨大なデータが、CNNの深層モデルを訓練するために不可欠でした。
  • GPUの活用: GPU(Graphics Processing Unit)の並列計算能力が、CNNの複雑な計算を高速に実行することを可能にしました。
  • ReLU活性化関数: 従来の活性化関数が抱えていた勾配消失問題を軽減し、深いネットワークの学習を容易にしました。
  • ドロップアウト: 過学習を防ぐための正則化手法が、モデルの汎化性能を高めました。

AlexNetの勝利は、画像認識研究におけるパラダイムシフトを巻き起こしました。それ以降、ILSVRCの優勝は常にCNNベースのディープラーニングモデルによって占められ、エラー率は驚くべき速さで低下していきました。ResNetやInception Netなど、さらに高性能なCNNモデルが次々と登場し、人間の認識能力を超えるほどの精度を達成するようになります。

画像認識におけるディープラーニングのブレイクスルーは、自動運転、顔認証、医療画像診断、セキュリティ監視など、私たちの社会の様々な分野でAIの応用を加速させ、現代のAIブームの原動力の一つとなりました。これはまさに、AIが「見る」能力を獲得した夜明けでした。

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