人工知能(AI)という言葉が正式に誕生し、学術研究分野として確立されたのは、1956年の夏、アメリカのダートマス大学で開催された「ダートマス会議(Dartmouth Summer Research Project on Artificial Intelligence)」でした。この会議は、AIの歴史において極めて重要な転換点となりました。
会議を提案したのは、ジョン・マッカーシー(計算機科学者)、マービン・ミンスキー(認知科学者)、ナサニエル・ロチェスター(IBMの研究者)、クロード・シャノン(情報理論の父)といった、当時最先端の研究者たちでした。彼らは、人間が持つ知能の特定の側面を、機械を使ってシミュレートできる可能性を強く信じていました。
マッカーシーが提案書に記したように、彼らの目的は「学習のあらゆる側面、あるいは知能の他のあらゆる特徴を、機械を介して記述できる原理を探し出すこと」でした。この会議で、マッカーシーは初めて「Artificial Intelligence(人工知能)」という用語を提唱しました。それまでの研究は「サイバネティクス」や「オートマトン理論」といった幅広い枠組みの中で行われていましたが、「人工知能」という明確な名称が与えられたことで、この分野の研究が独立した学問領域として位置づけられることになります。
約10週間にわたって開催されたこの会議には、前述の提案者に加え、アレン・ニューウェル、ハーバート・サイモン、オールド・セルフリッジといった後のAI研究を牽引する多くの才能が集結しました。彼らは、推論、問題解決、学習、自然言語処理、創造性といった知能の様々な側面に焦点を当て、機械でそれらを実現する方法について議論を交わしました。
この会議そのものが具体的な技術的ブレイクスルーを生み出したわけではありませんが、AI研究の方向性を定め、主要なプレイヤーたちを結びつけたという点で絶大な影響力がありました。特に、ニューウェルとサイモンは会議中に「Logic Theorist」という、論理学の定理を自動的に証明するプログラムを発表し、機械が単なる計算以上の「思考」を行う可能性を具体的に示しました。
ダートマス会議は、AI研究の「夜明け」を告げ、その後の数十年にわたる研究の基礎を築きました。この会議をきっかけに、世界中でAIへの関心が高まり、多くの研究機関がAIの研究室を設立し、膨大な資金が投入されることになります。会議で生まれた「人工知能」という言葉は、未来への大きな期待と挑戦を象徴する言葉として、今日まで使われ続けているのです。
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