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【AIの歴史13】AlphaGoの衝撃:囲碁で人類の知能を超える

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2016年3月、AIの歴史にまた一つの大きな金字塔が打ち立てられました。Google DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」が、囲碁の世界チャンピオンである韓国のイ・セドル九段との5番勝負で、4勝1敗と圧倒的な強さで勝利したのです。この出来事は、ディープ・ブルーがチェスでカスパロフを破った時以上の衝撃を世界に与え、AIの潜在能力に対する認識を劇的に変えました。

囲碁は、チェスよりもはるかに複雑で、局面の数が天文学的に多いため、コンピュータが人間を上回ることは困難だとされてきました。チェスが比較的「探索」で解決できるのに対し、囲碁はより直感的、かつ「大局観」や「パターン認識」が求められるため、「AIが囲碁で人間を破るにはあと10年はかかる」と多くの専門家が予測していました。

しかし、AlphaGoは、その予測を覆しました。AlphaGoの強さの秘密は、ディープラーニング強化学習、そしてモンテカルロ木探索という複数の技術の組み合わせにありました。

  1. ポリシーネットワーク(Policy Network): 大量のプロ棋士の棋譜データ(人間が打った過去の対局データ)をディープラーニングで学習し、「次の一手として最も有望な手」を予測する能力を身につけました。これにより、膨大な選択肢の中から効率的に有望な手を探すことが可能になりました。
  2. バリューネットワーク(Value Network): これもディープラーニングによって学習され、現在の盤面が最終的にどちらのプレイヤーにとって有利か(勝率)を評価する能力を持ちました。
  3. 強化学習(Reinforcement Learning): プロ棋士の棋譜だけでなく、AlphaGo自身がAlphaGo同士で対局を繰り返す自己対局(Self-Play)を通じて、強化学習によってさらに強くなっていきました。これにより、人間には思いつかないような斬新な手を学習し、創造的な戦略を生み出す能力を獲得しました。
  4. モンテカルロ木探索(Monte Carlo Tree Search, MCTS): 探索木の中で、有望な枝を重点的に探索する効率的な探索アルゴリズムです。ポリシーネットワークとバリューネットワークが、この探索をガイドすることで、限られた時間内で最適な手を見つけることを可能にしました。

イ・セドル九段との対局では、AlphaGoが人間には理解しがたい「神の一手」とも呼ばれる手を打ち、世界中の囲碁ファンとAI研究者を驚かせました。特に、第2局の37手目は、人間では考えられない奇手でありながら、結果的に局面を有利に進める画期的な手でした。

AlphaGoの勝利は、AIが特定の専門分野において、人間の最も高度な知能を凌駕し得ることを明確に示しました。これは、AIが単なる計算機ではなく、自律的に学習し、創造的な問題解決を行う能力を持つことを意味しました。この出来事は、ディープラーニングと強化学習の可能性を世界に知らしめ、その後のAI研究、特にロボティクス、自動運転、創薬など、現実世界での応用を加速させる大きな推進力となりました。AlphaGoは、AIの新たな時代の到来を告げる象徴的な出来事となったのです。

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